interested

独身時代の私は、毎年のように米・ニューヨークを訪れていました。
当時日本はバブル期、中でも勢いのあった金融機関に勤務していたため訪問先はもっぱらウォールストリート…と言いたいところですが、実はアートと映画にしか興味がなく、美術館やロケ地訪問が毎回の主な目的でした。

ある時、まだあまり治安が良くないながら若い芸術家たちの現代アートを見ることができて面白い、と評判になっていた倉庫街の‘Soho’に出かけたのです。
港湾の荷揚げ場を改装しただだっ広いロフトは雑然としていて、ギャラリーというよりまるでフリマ。
お世辞にも高級とは言えないラフなスペースで自称アーティスト達は楽しくも誇らしげに自らの作品を展示していました。

そんな中、古い小さなガラスケースに入ったピアスに私は目を奪われます。
いくつかの三角形と四角形が‘テキトーに’組み合されているだけのような。しかも材料は素地のままのブリキです。
ジョウロか何かの廃材をザクザク切って作られたようなそのピアスにつけられていた値段は、忘れもしない182ドルでした。
当時の日本円で軽く2万円以上だったと思います。
なんというかちょっとした…いえ、かなりの衝撃でした!

『なにこれ?これで作品?』
バブルの洗礼のおかげで妙な高級志向に傾いていたせいか、「素材はゴールドどころかシルバーですらないし、雑な子どもの手作りみたい。なのにこんなお値段で売るんだ~、ずうずうしくない?」と。
ボヤキにもやっかみにも似たとてもネガティヴな感想を抱いたことをいまここに告白します(笑)

でも実は心の声はこうも言っていました。
『自分が自由に作った作品を世に出して、それを人が求めてくれる仕事なんて、最高!』

きっとこの時に、本当にやりたいことを神様が見せてくれていた?のかもしれませんが、帰国後はすっかり忘れ、また会社勤めの日常に戻っていきました。

beginning

数年ののち結婚をし、2人の娘に恵まれます。
義母はとてもおしゃれな女性で、2人のバースデーのたびに小さなアクセサリーをプレゼントしてくれました。

華奢なチェーンの先についた可愛いダイヤモンド達は不思議にそれぞれ表情が違い、まるでクスクスと笑い合っているような繊細なきらめきを見せたり、時にはキラリと鋭く輝いたりして、『わぁ~見飽きないなぁ、石ってなんだか生きてるみたい…』と思ったものです。

その後、たまたま友人のつきそいで行ったストーンショップでたった2種類だけ手に入れたストーンビーズから、『RINQUE BIJOUX(リンクビジュー)』がスタートします。
当初見よう見まねで自分だけのために製作したネックレスやブレスレットを、「私もぜひ同じものがほしい」「当ギャラリーで作品展を…」などと言ってくださる方が現れたのです。
こんなのでいいのかな?信じられない気持ちと、でも使ってもらいたい、見てもらいたいという思い。

あのときSohoのギャラリーで、なかばヤケのように?『いいな~!』とつぶやいた生活がこれなんだ!と気づくのは…
もう少しあとになります(笑)

from now on

おかげさまで2017年秋現在、単独での作品展は20回を数え、今年5月には10周年記念イベント、9月には初の神戸でのコレクションを開催いたしました。

気づけば、好きな作品を自由に作り、その作品たちを求めてくださる方が大勢いらっしゃるという、ありがたい状況に身を置いていました。

今ではRINQUE(もともとは私の名前がよく「りんこ」さん、と読み間違えられることから思いついた造語です)=Linkだったと改めて実感させられる、お客様やスタッフ、ギャラリー関係の皆様との強く温かいご縁のリンクにただただ感謝の毎日です。

単なるファッションと捉えられがちなアクセサリーですが、天然石をはじめとした自然素材は人と地球との深い関わりをいつも思い起こさせてくれますし、世界中のいろんな民族が身につけてきた意匠、時代を象徴したスタイルなどは脈々と現代にも息づき、デザインとして取り入れていくことができます。
もし強く惹かれるものがあるなら、それはきっとその人の魂のアーカイブと深く関わっているはずです。

できるならそれぞれの人の魂に響く作品、毎日を彩り潤す良き友人となりうる作品を、これからさらに生み出していけたらと。

私の人生に関わってくださるご縁のあるすべての方々、力を貸してくれる石や道具たちにも、心からありがとう。

横浜にて    杉谷倫子